新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、ウィルスに対する予防効果を謳った商品への関心が高まっている。
先に消費者庁はこうした新型コロナウィルスに対する予防効果を謳った健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品等(以下「ウィルス予防商品」という。)に対し、一般消費者へ注意喚起を行った。消費者庁のサイトは下記から参照されたい。
ここでは皆さまの正しい理解に寄与する事を目的とし、空間除菌商品に使用される成分についてまとめることとした。
空間除菌商品に使用される成分
次亜塩素酸ナトリウム
日本では従来、多くの場合において除菌・消毒には「次亜塩素酸ナトリウム」が利用されてきた。台所の除菌や洗濯物の漂白剤としてお馴染みの商品である。「キッチンハイター」など。
「次亜塩素酸ナトリウム」は強い酸化作用により高い殺菌効果を生むが、酸性物質と混合すると有毒な塩素ガスを発生させたり、また有機物に触れると発がん性が疑われる*トリハロメタンと呼ばれる有害な化合物を作る。
トリハロメタンはヒトに対しても発がん性や催奇形性を持っているのではないかと疑われている。特に、水道水中から検出されたトリハロメタンについては濃度が高かったこともあり社会問題となった[1]。また、同じく水道水中からも検出され、トリハロメタンの代表ともされるクロロホルムに関しては肝障害や腎障害を引き起こすことが知られているなど、トリハロメタンの中には急性毒性を持った物質も含まれる。
Wikipedia引用
「次亜塩素酸ナトリウム」は水溶液中の次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンが持つ酸化作用により殺菌するものであり、錠剤等における空間除菌剤としての効果は不明である。
二酸化塩素
「二酸化塩素」は日本ではプールや浄水処理等における消毒剤として利用されている。「二酸化塩素」は強い酸化力をもつことから、ウイルス除去、除菌、消臭、坑カビ等のはたらきがあることは知られているが、同時に毒性も有することから、国内では医薬品としては未認可物質である。一方、米国では厳格な基準のもと食品添加物として認可されていることから、一定の基準を満たした使用においては消毒剤以外の用途においてもその有用性を期待されているのも事実である。
「二酸化塩素」は非常に揮発しやすい性質である為、長らく水溶液にすることができず、汎用品として商品化することが難しかった。「二酸化塩素」の有効性と安全性についてはWikipediaで以下のように記されている。
~2008年(平成20年)、強毒性H5N1型鳥インフルエンザの人型変異とそれに起因する世界的大流行(パンデミック)への懸念から、空間消毒薬として二酸化塩素ガスが注目され、日本の経済報道番組[3]でも紹介された。それ以後も日本のプロ野球団で使用されているとスポーツ紙で取り上げられる[4]などしている。
しかし、二酸化塩素の安全性は経口摂取では確認されているものの、長期間低濃度雰囲気での暴露に係る安全性の検証(毒性試験)は不安定で反応性の高いガスである為か、世界的にみても十分とはいえない状況である。~
Wikipedia引用
近年、二酸化塩素を水溶液に溶かして安定させる方法の研究が進んだことから、空間除菌剤としての使用か広がりつつある。
しかし、「二酸化塩素」は、化合物の性質上、水溶液(二酸化塩素ガス溶存液)としてはその効果が期待できる一方、置き型や携帯型タイプではその効能が使用する空間条件に大きく左右されることや、揮発しやすい物質であることからどの程度持続効果が期待できるのかと言う事については疑念が残る。
亜塩素酸ナトリウム
亜塩素酸ナトリウムは白い結晶で水によく溶ける性質を持つ。酸化を行うと、二酸化塩素が発生する。
亜塩素酸ナトリウム(あえんそさん—)は、亜塩素酸のナトリウム塩で、化学式 NaClO2 と表される無機化合物である。毒物及び劇物取締法により劇物に指定されている[1]。
wikipedeia引用
次亜塩素酸水
塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液であり、殺菌効果を有し、我が国においては定められた使用基準において安全性が確認され、平成14年6月に食品添加物として指定されている。ただし、使用する際は食品、添加物等の規格基準(昭和 34 年 12 月厚生省告示370 号)において、「次亜塩素酸水は、最終食品の完成前に除去しなければならない」等の使用基準及び成分規格が定められている。
厚生労働省の「次亜塩素酸水」に関するPDF資料はこちら。
2020年5月29日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)は新型コロナウィルスの消毒目的で利用が広がっている「次亜塩素酸水」について、現時点では有効性は確認されていないとする中間結果を公表した。NITEは「加湿器などで噴霧することやスプレーボトルなどで手や指、皮膚に使用することは安全性についての科学的な根拠が示されておらず控えてほしい」と呼びかけている。

一方、帯広畜産大学は2020年5月14日、次亜塩素酸水が短時間で強力に新型コロナウイルス(SARS-CおV-2)を不活化することを証明し、また、次亜塩素酸水の新型コロナウイルス不活化活性は溶液の酸性pHではなく、含まれる遊離塩素濃度に依存することを明らかにしたと発表した。続けて、2020年5月21日、研究成果第2報も発表した。第2報は第1報の追加検証の結果であり、第1報の結果を補完する内容となっている。

製品評価技術基盤機構(NITE)並びに帯広畜産大学の研究結果からは「次亜塩素酸水」を使用する際の注意点が読み取れる。①手や指、皮膚に使用することは安全性についての科学的な根拠が示されていない。②加湿器などでの噴霧は控える。③新型コロナウィルス不活化活性は溶液の酸性pH値ではなく含有遊離塩素濃度に依存する。④長期間開放状態で室温放置され塩素濃度が低下した次亜塩素水ではウイルス不活化活性が低下する。⑤使用の際は十分な液量を用いる。⑥極度に汚れている場所は複数回のふき取りを行う。
次亜塩素酸水については一部でその有効性が実証されつつも国と業界団体との見解がまだ合致しない中、2020年6月11日、北海道大学などの組織の研究者らで構成された「次亜塩素酸水溶液普及促進会議」が記者会見を開いた。その中で「弱酸性次亜塩素酸水を過剰噴霧した想定実験においても、人体に有害ではない。」とした。
最後に
空間除菌や殺菌を謳った商品は数多くみられるが、成分によりその効能や効果は個々に異なる。新型ウィルス感染症においては「三蜜を避ける」こと、「手洗いを励行する」ことが効果的であるは周知の事実である。外出先や個々の環境においてそれらが叶わない場合において空間除菌や殺菌を謳った商品が正しい知識と理解のもと有効に活用されることを願いたい。そして新型コロナウィルスに効果的な新たな知見を期待したい。
空間除菌を謳った個々の商品の性能を正しく理解した上での使用が肝要である。
新型コロナウィルスに対する消毒方法の有効性評価についての最終報告-NITE
「次亜塩素酸水」についてはこれまでそれぞれの立場で様々な見解が示されていましたが、NITEが最終の評価を発表した。
そこでは「次亜塩素酸水」について、十分な量を使用すれば有効であるとする検証結果を発表した。
なお、この検証は消毒の効果の検証であって、安全性についての検証は行っていないとしている。
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